2008年5月10日 (土)

間違い探し

Yasukuni2 「靖国 YASUKUNI」 見てきました。

で、「本当に反日的な内容なのか?」と言われれば、「そう思って見る人には、そう受け取れる部分もある」といったところでしょうか。報道される見た人のコメントが実にまちまちであることから、予想していたとおり、見る人の立場によって、様々な見方が出来るような作りになっていました。
たぶん日本人と中国人では、かなり受け止め方が異なるのではないかという気がします。監督が、計算してわざとそういう作りにしたのだとしたら、なかなかしたたか(悪く言えばズルイ)だと思います。

ただ、ドキュメンタリー映画としての出来ばえはどうかといえば、決して賞をいくつも取るほどいいとは思えませんでした。手放しで褒めている著名人たちの讃辞は、まあ一般映画の宣伝と同じで、かなり割り引いて聞く必要があるでしょう。それでも、見る価値はあると思います。特に若い人たちには見てもらいたいと思います。靖国という場所が、外国人、それも中国人の眼にどういう風に捉えられたのか、それを知るだけでも充分価値はあります。その見方が正しいか正しくないかは二の次の問題で、まずどう見えているのかを知ること、それが相互理解の第一歩ではないでしょうか。

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2008年4月 1日 (火)

四月馬鹿?

Yasukuni つい先程、4月中旬から公開予定だった話題の映画「靖国 YASUKUNI」の上映を予定していた映画館すべてが、「上映中止」を決定したという報道が流れました。
ネット上でその報を眼にしたのが、0時すぎであったので、これはてっきりエープリルフールのネタかとも思ったのですが、どうやらそうではないようです。
報道されるところによれば、「「具体的な抗議や嫌がらせはないが、不特定多数の人が集まる施設なので、万が一のことがあってはならない」というのが、上映中止を決めた理由だそうです。なんだか、最近どこかで聞いたようなセリフです。でも、あれはえげつない商売で経営者が逮捕されるような高級宿屋の話、こちらは映画という表現にかかわる仕事をしている会社の話です。こちらの方が、はるかに深刻です。

「中国人監督が靖国神社を撮った」というだけの理由で、内容を見もしないで「上映を中止しろ」と騒ぎ立てるなんて、相手が日本だからというだけの理由でサッカー日本代表に心ないブーイングを浴びせる中国の観客と同じレベルだということがわからないのだろうか。少なくとも、自分の目で映画を見た上で、どこが悪いのかということを具体的に議論すべきであろう。それが文化的国家の人間のすることじゃないのか。
 それにもまして情けないのは映画館の運営会社の姿勢である。上映中止を求める組織的な電話がかかってきたのかもしれないが、なぜ「あなたはその映画をご覧になったのですか。もしご覧になっていないのでしたら、ご覧になってから批判や議論をしていただきたい」と言えなかったのか。表現や芸術にたずさわる仕事をしているのだという矜恃や責任感はないのだろうか。しかも世間が暫定税率廃止で騒いでいる時を狙ったかのようなタイミングで、こそっと中止を決めるとは。
 ガソリンが25円安くなるかどうかよりも、この問題の方が影響ははるかに深刻です。暫定税率の問題は所詮経済の問題だから、一時混乱はしても、あとからいろいろ手当をすれば、なんとか収まるでしょう。いや、うまくすれば(今の政府にうまくできるかどうかあやしいが)、前より良い結果になるかもしれません。しかし、この上映中止問題は、どう転んでも良い方へ向かうとは思えないのです。

 4月の頭から、いきなり気が重くなるような話です。公開されたら早速観に行って、授業のネタにしようと思っていたのに。批判も含めて、恰好の教材だったのに。久しぶりに怒りに燃えておりますannoy。上映を予定していた映画館の親会社に、夜中に抗議のFAXをぶちかましてpunch、その勢いでこのブログを書いております。このままではとても眠れそうにないので、酒かっくらって寝ることにします。

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2008年2月29日 (金)

団塊の世代への宿題

今日は朝から眼科の定期検診へ。
手術した剥離部分は、くっついているので大丈夫ということだが、やはり網膜に別の病変(黄斑)があるということで、いずれまた手術をしなければならないことになるかもという話。
僕は家系的にも長生きしちゃいそうなので、眼がもってくれないと困るなあ。

Asama などといいながらも、夜は映画を見に行く。
「実録・連合赤軍―あさま山荘への道程」
今日2月28日は、まさにあさま山荘事件が終わった日ということで、若松孝二監督の舞台挨拶つき特別先行上映がテアトル新宿である。
題材からして、胸くそ悪くなるのは覚悟の上で、それでもやはり観に行かずにはいられなかった。事件当時、僕は中学3年生だったけれど、その衝撃はオウム事件の比ではなかったように思う。最も多感で、最もものを考えていた年頃だったせいもあるだろうけれど、あさま山荘に至るあの一連の事件で、僕はいろんなものを見てしまったような気がする。

映画は190分という長尺であるが、長く感じなかったということは、よくできているということだろう。「実録」というとおり、ひたすら事実を再現してゆく。事件を全く知らない若い人にもわかるように、「それでは、ここで説明しよう」みたいな丁寧なナレーション(原田芳雄)が入るので、事実過程をきちんと追ってゆくことが出来る。
自分でも驚いたのは、僕自身、説明されてゆく事件の内容をほぼ正確に知っていたこと、主要メンバーについては、役者さんの顔が映っただけで、それが誰を演じているのかすぐわかったこと。事件の後、高校生になった僕が、いかに事件の詳細を報道する新聞や雑誌を丁寧に読んでいたか、ということだと思う。最後まで残った加藤兄弟などは、出身も近く、年も近かったから、事件を他人事として受け止めてはいなかった気がする。

若松監督は、誰か特定の主人公の心理を描き出そうとしたり、臭い人間ドラマに仕立てたりはしていない。一応、坂井真紀演じる遠山美枝子にカメラは向けられているが、彼女も途中で無惨に殺されてしまう。むしろ淡々と、凄惨な事実を再現してゆく。同じあさま山荘事件を警官隊の側から描いた映画が、感動のドラマであったのとは対照的である。警官隊の2名が使命(職務)のために命を犠牲にしたのに対し、まったく無意味な死に追いやられた12人の若者たち。その事実の重さを伝えるために、あえてドラマとしては描かなかったということだろうか。
しかし、若松監督が余計な解釈をつけ加えなかったことで、結局あの事件は何だったんだ、という根本的な疑問は宙ぶらりんのまま残ってしまった気がする。どこで間違ったのか、何がいけなかったのか。映画の中では、森恒夫と永田洋子の性格的なものに起因するという、一般的解釈以上のものは示されない。だから、見終わって「なるほど、そうだったのか」とはならない。むしろこれは監督からの「あれはいったい何だったんだ」という宿題なのだろうか。

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2008年2月14日 (木)

レンブラントの夜警

ようやくすべての採点が終わりました。全部で約200本のレポートを読み、試験答案50枚を採点しました。
Rembrandtひと息ついたので、久しぶりに映画を見に出かけました。
レンブラントの夜警」です。ピーター・グリーナウェイがレンブラントを撮ったと聞いた時から、見たいと思っていたのですが、結論からいうと、うーむむむ、ビミョーであります。悪くはないんだけど、良くもない。今日はたまたまサービス・デーとやらで1000円だったので、満足だけどね。

結局、「夜警」制作にまつわる謎解きサスペンスをやりたかったのか、それともレンブラントを描きたかったのか。欲張って両方やろうとして、ボケちゃったような感じです。

そういえば、2002年の「大レンブラント展」の時は、わざわざ京都まで観に行ったっけ。それだけの価値のあるすごい展覧会だったけれど、その時でさえもさすがにオランダの至宝「夜警」は来ませんでした。だから、ちゃんと細かいところまでじっくり観察したことはないけれど、なんか変な絵であることは確かです。落ち着かない、気持ちが悪い絵です。
グリーナウェイは、この絵の謎解きをやりたかったようです。でも前半のその謎解き部分がわかりにくい。歴史や美術を知らないとわからない小ネタがいっぱい仕込まれていて、知識があればかなりついて行けると思うんだけどね。いきなり「ユグノー虐殺の生き残り」なんて言われても、必修の世界史を未履修だったりしたら、なんだかわかんないぞ。予習していった方がいいかも。
でもって、絵は映画の中程でいつのまにやら描き上がってしまって、後半は堕ちてゆくレンブラントの話に。この後半は、もうグリーナウェイ節全開です。裸大好き、お尻大好き!まあ、でもとってもキレイなエロで、嫌いじゃないですけど。きっと、あっちもこっちもやりたかったんだな。
最後の、デ・ロイに長々と語らせたレンブラント評は(ネタバレになるので、書きませんが)それなりに面白かったですが、やっぱり前半と後半が緊密にかみ合わなかった感じは拭えませんでした。
ただ、俳優陣の演技は素晴らしかったです。
というわけで、評価は★★★☆☆(星三つ)。

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2006年11月29日 (水)

映画祭2連発!!

近々開催される映画祭の紹介をお届けします。

Chinadocument まずは中国インディペンデント映画祭
中国・自主ドキュメンタリー in 東京
― 饒舌な日常生活 ―

 中国で最近に自主製作されたドキュメンタリー5作品を一挙上映し、映画の手法・テーマ・中国社会の日常生活の状況などについて討論します。

日程:2006年12月10日(日)
   10:00~11:30 房山教堂(徐辛監督作品)  討論:11:30~11:50
   11:50~12:10 車  廂(徐辛監督作品)  討論:12:10~12:30
   13:30~15:00 張博士(黄儒香監督作品)  討論:15:00~15:20
   15:30~17:00 馬 皮(徐辛監督作品)  討論:17:00~17:20
   17:30~19:00 外 面(王我監督作品)  討論:19:00~19:20

場所:専修大学神田校舍1号館202教室(地下鉄神保町OR九段下 徒歩3分)
主催:専修大学中国倶楽部+土屋研究室
* 無料

問い合わせ:the0561@isc.senshu-u.ac.jp 
専修大学HP:http://www.acc.senshu-u.ac.jp/koho/campus/index06.html 
研究室HP:http://www.t3.rim.or.jp/~gorge/tsuchiya.html
TEL:044-900-7933

<作品解題>
房山教堂(徐辛監督作品)江蘇省の農村に建設されたあるキリスト教会の実態。
車廂(徐辛監督作品)満員の長距離帰省列車の中で交わされる会話と表情。
張博士(黄儒香監督作品)文革で学業を放棄した「張博士」はロシアをめざす。
馬皮(徐辛監督作品)道教名山に近い江蘇省の村で近年始まった民間のお祭り。
外面(王我監督作品)アウトサイドに広がる中国の不思議な日常生活の数々。
 
Okinawamovie もひとつはオキナワ映画祭
傑作・問題作23本を全編上映。乱反射するさまざまのオキナワを見つめ、問い直す、4日間のドラマトゥルギー。
日程:2006年12月19日(火)→22日(金)
会場:和光大学 Jホール
主催:和光大学イメージ文化学科
入場料:無料(ただしパンフ代・資料代の実費をいただきます)

主な内容(この他にも映画上映多数、ギャラリートーク等あり)
12/19 13:00「やさしいにっぽん人」(東陽一/1970)
        17:00「独立少女紅蓮隊」(安里麻里/2004) 
12/20 10:00「島クトゥバで語る戦世」(比嘉豊光/2003)
        14:00「からゆきさん」(今村昌平/1973)
12/21 11:20「パラダイス ビュー」(高嶺剛/1983)
        14:00「ウンタマギルー」(高嶺剛/1989)
        16:30「夢幻琉球:つるヘンリー」(高嶺剛/1998)
        19:00 鼎談 高嶺剛×波照間栄吉×藤井貞和(司会:山本ひろ子)
12/22 10:45「新海南小記 アカマタの歌」(1973)
        14:40「ドルチェ―優しく」(A・ソクーロフ/2000)
        12:00「神々の深き欲望」(今村昌平/1968)
        15:00「夏の妹」(大島渚/1972)
      
問い合わせ:hiro@wako.ac.jp
映画祭HP:http://wako-image.net/okinawa/

Okinawaprogram 詳しいプログラムはこちら。

おおーっ、「夏の妹」! 栗田ひろみだぁっ。
って誰もわかんないよね。

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2006年8月31日 (木)

A・ソクーロフ「太陽」

Thesun 新しい眼鏡が出来たので、映画を見に行くことにしました。
今話題の「ゲド戦記」A・ソクーロフ「太陽」を観ました。
うむむむ、正直言って、どう評価してよいのか、よくわかりません(こんなことは珍しいんですが)。悪くはないと思います。「金返せ」とは思わなかった。でも、人に勧めるか?と言われたら、うーむ、って感じ。
ただ、絶賛する人の気持ちはわかるような気もする。歴史上の昭和天皇ではなくて、等身大の人間裕仁を描こうとしたのは、確かに画期的かもしれない。欧米の人たちにとっては、すごく新鮮だったんだろう。でも、実は立憲君主たらんとした平和主義者で、英語が話せて、ユーモアを解する海洋生物学者である天皇像というのは、戦後生まれの僕たちにとってはよく知ってるあの人の姿であって、それほど意外性はない。むしろ、そこなんだよね、問題は。じゃあ、あの大元帥陛下は虚像なんだろうか。だとすれば、その虚像を作り出していたものは何なのか。
もちろん面白いところは、いくつかあった。
トビウオの爆撃機から魚の爆弾が降ってくる幻想シーン(CG)が話題になっているけれど、子供の頃から両親に、B29の編隊が銀色のジュラルミンの胴体をキラキラと光らせながら飛んでくる様は「すごくキレイだった」と聞かされて育った僕にとっては、とても自然に思えた。きっと活きのいいイワシのお腹みたいに光ってたんだろうなあと思ってたから。
イッセー尾形と桃井かおりは、確かにちょっと他に思いつかないくらい秀逸なキャストだと思う。その点は脱帽するしかない。でも、日本語でしゃべっているところは、どうしてもイッセー尾形に見えてしまうんだよね。むしろ、マッカーサーと相対して、英語でしゃべっている時の方が、天皇としてのリアリティがあったのは、とても不思議な感じがした。
天皇の日常生活のディテールについては、本当によく描けていると思う。ソクーロフという人は、ものすごい量の資料を集めて、下調べを綿密にやる人なんだということはよくわかる。かつて身内に宮中に仕えていた者がいたせいで(映画の中で天皇におでこをはたかれていた老僕がいたけど、まああんな立場の者だと思う)、子供の頃、祖母から時々宮中の様子を聞かされたけど、そのイメージとほとんど違和感がなかった。その意味では「外国人の目から見た変なエンペラー」になってないところは、たいしたもんだと思う。
それと、もうひとつ、これがもしハリウッドで作られても、中国で作られても、決してこんな天皇の描き方にはならなかっただろうということは強く感じた。ロシア人の監督というポジションはやはり大きいと思う。映画の中で、進駐軍のアメリカ兵たちを礼儀知らずのお上りさんに描いている場面があって、結構笑えるんだけど、これはハリウッドで作られていたら絶対あり得ないなと思った。王様というものを見たことがない田舎者のアメリカ人に対する冷笑的な視線と、かつて皇帝を戴いていたロシア人ならではの天皇へのシンパシーが感じられて、印象的だった。
ブルーノ・ガンツの怪演で話題になった「ヒトラー~最後の十二日間」も観たけど、あちらの方は史実どおりにきちっと「最後の十二日間」を追っていて、まるでNHKの「その時、歴史は動いた」みたいだった。あの映画も、それなりに面白かったけど、事実に忠実すぎて、ドラマとしてはみんなが絶賛するほど素晴らしいとは思わなかった。ただ、ドイツ人がこれを撮ったというところが、最大の評価ポイントなんだろうということはわかった。
それに対して、この「太陽」は、日本人じゃなくて、ロシア人が撮ったところが評価ポイントっていうことになる。じゃあ、日本人が撮っていたとしたらどんなものになったんだろう、という想像すらできないところ、これがやっぱり最大の問題だよね。
そうそう、あと、木戸内相があまりに似ていて思わず吹き出しちゃったのは僕だけでしょうかね。

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